専業主婦でも開業できるの?
自宅サロンを開業する際は、税務署に「開業届」を提出することで、どなたでも「個人事業主」として正式に事業を開始することができます。
専業主婦の方や、夫の扶養内で働いていた方にとって、個人事業主になるのはハードルが高く感じるかもしれません。
しかし自宅でサロンがやりたい!と思う方に、専業主婦が自宅サロンを運営するために個人事業主となる際のポイントや手続きを詳しくお伝えしたいと思います。
開業届と青色申告承認申請書を提出する
扶養されている主婦でも起業は可能です。
年間の売上から経費を差し引いた「所得」が48万円以内に収まれば扶養内で開業できます。
さらに、開業届と共に、青色申告承認申請書の提出をしておくと、特別控除として55万円(または65万円)の控除が受けられるので、
年間103万円までの利益であれば扶養内で自宅サロンの経営が可能です。
・他でパートをしている方や、不動産所得などがある場合は、上限額が変わりますので注意してください。
提出は、税務署の窓口に直接持参するほか、郵送やe-Taxでの提出も対応しています。まずは「開業届」と「青色申告承認申請書」を準備し、税務署に提出してみましょう。
「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する際の持ち物
1青色申告承認申請書 ...
2本人確認書類 ...
3マイナンバーがわかるもの ...
4印鑑
「開業届」の提出はどなたでも簡単にできます。難しい書類ではありません。
事前に「屋号」(お店の名前)を決めておくくらいで、所在地などの基本情報を記入するだけで提出が完了します。
青色申告は、簡単に言うと経理上の作る表がいくつか増える、という感じです。難しくはないですが、ご自分では出来ないと感じたら有料の経理アプリなどを使うと良いと思います。
また、事業が赤字になった際にその損失を翌年以降3年間にわたって控除できるといったメリットもあります。
この「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出すれば、どなたでも個人事業主として自宅サロンを開業できるのです。
「主婦の趣味」と「個人事業主」の違い
実際、主婦が自宅で友人にネイルをして2,000円を受け取ったり、手芸やピアノを教えたりする際には、開業届の提出を意識することはあまりないかもしれません。
どの時点で「事業」として開業届を出すべきかは難しい判断ですが、事業を始める時に提出する必要があるのです。
趣味のつもりが、定期的に依頼が来ると感じた段階で提出する方も多いでしょう。
注意するライン
結論として、年間の事業所得が48万円を超えると、社会保険料の支払いが発生します。
事業所得は、「総収入金額-必要経費」で計算します。
青色申告をしている場合は、「総収入金額-必要経費-青色申告特別控除額」で計算されます。
パートと同じ上限
「青色申告承認申請書」を提出しておけば、収入の上限はパート収入と同じく103万円までとなります。この場合、103万円までの所得があっても、扶養内で自宅サロンを経営することができ、ご主人に迷惑をかけることもありません。
材料代や光熱費は経費として計上できますので、利益から引くことが出来ます。
青色申告を利用すれば、控除が適用されるため、所得が103万円以内であれば扶養を外れることなく、安心してサロン経営を続けられます。
扶養を外れることを恐れずに
しかし、せっかく起業したのですから、収入を抑えることばかり考えるのではなく、どんどん挑戦して収入を増やし、経済的に自立を目指すことも素晴らしい考え方です。
自分のビジネスを成長させるためには、新しいアイデアを取り入れたり、顧客層を広げたりすることが重要です。
収入が増えていけば、それに伴い自分の自由度も広がり、より多くの選択肢が増えることでしょう。
経済的な自立を目指しながらも、無理なく段階的に成長していくことが大切です。
年収150万円の壁
年収が106万円を超えると、社会保険の加入対象となり、毎月の社会保険料が天引きされることになります。しかし、年収125万円未満の場合、社会保険料の負担を考えると「働き損」になってしまうことがあります。
そのため、年収106万円未満に抑えることで社会保険に加入せず、負担を避けるか、
年収126万円以上にすることで、社会保険料の支払いを考慮しても損を避けることができます。
また、年収150万円の壁は、配偶者特別控除の満額38万円の控除を受けられる年収の上限を指します。年収150万円未満であれば、配偶者の年収に対して最大38万円の控除を受けることが可能です。
主婦の確定申告
「確定申告」と聞くと、難しそうで避けたくなるかもしれませんが、実際にはそれほど難しくありません。
特に「自宅サロン」の場合、お金の流れがシンプルなので、確定申告も簡単に感じるはずです。基本的には、材料を仕入れて施術料をもらうだけなので、収入と支出がはっきりしています。
もし「物販」や「通販」を行う場合、売れ残りの計算などが必要になり、少し複雑になりますが、基本的には売上に対して経費を計上できるので、事業の実態に合わせて税額を調整することができます。
必要経費
確定申告では、必要経費を仕分けして記録し、その合計を総売上額から引くことができます。その結果が所得になるので、ここはしっかりと分別をして計上する必要があります。
自宅サロンの場合、経費として計上できる項目は多岐にわたります。例えば:
- 材料費(ネイル用品や消耗品など)
- 作業スペース費(家賃の一部、もしくは使用している部屋の光熱費)
- 光熱費(電気、水道、ガスなど)
- 書籍やセミナー費(ネイルに関する勉強や自己投資)
- 備品(施術用の道具や椅子、テーブルなど)
- 雑費や会議費(ネイルサロンの運営に関する細かい出費)
- 制服代(施術中に着用する制服やエプロンなど)
これらの経費を正しく記録して申告することで、税額を適切に計算し、負担を軽減することができます。
事業所得は、「総収入金額-必要経費」で計算します。
青色申告をしている人は、「総収入金額-必要経費ー青色申告特別控除額」で計算できます。
確定申告が必要になる条件
専業で個人事業をしている場合、年間の事業所得が48万円以上であれば確定申告が必要です(青色申告が必須)。青色申告をしていれば、控除額として55万円または65万円を差し引けますので、事業所得が48万円以下の場合は確定申告の必要はありません。
また、パートなどと兼業している場合で、給与所得以外の所得が20万円以上の場合も確定申告が必要です。
実際に自宅ネイルサロンを長く経営してみると、サロンだけで48万円を超す利益を上げるのはかなり働いた年になることがわかります。つまり、利益が少なければ確定申告の義務はないため、経営の規模や利益に応じて申告が必要かどうかを判断することが重要です。
必要経費について
個人事業主として、生活全般を経費に計上することはできません。特に、生活費や個人的な支出(例えばスーパーでの食費や家族とのレジャー費用など)は経費として計上できないため注意が必要です。登録を済ませた年には「食費などの生活費を計上しないように」というお触れが届いた記憶がある方も多いかと思います。
ただし、仕事に関連した支出は経費として計上できます。例えば、ネイルサロンに必要な道具や材料、スペースに使用するインテリア、事業用の通信費、光熱費などは適切に計上できます。
経費の管理を簡単にするために、普段からスマホ決済やカード決済を活用し、自分が使った支出の証拠が残るようにしておくのは良い方法です。領収書がない場合でも、決済履歴で何にいつ使ったのかが記録として残り、後から確認できるため、経費計上がスムーズに行えます。
家賃(スペース費)、光熱費
賃貸の場合、使用しているスペースに関して、事業に関連する部分を経費として計上することができます。例えば、自宅の一部をサロンのスペースとして使用している場合、その面積に応じて家賃の一部を経費として計上できます(例:使用している部屋が全体の10分の1なら、家賃の10分の1を経費に計上)。ただし、廊下やトイレなど、専用で使用していない部分は経費として認められません。
分譲の場合は、固定資産税の一部を経費として計上できます。この場合も、使用しているスペースの割合に応じて計上します。具体的なパーセンテージについては決まりがないため、使っている面積を基に合理的に算出します。
また、光熱費や通信費についても、事業で使用している割合を経費として計上できます。例えば、月々の光熱費や通信費のうち、事業用の割合(例:10分の1)を経費として計上することができます。
まとめ(主婦の場合)
専業主婦が自宅サロンを経営する場合、扶養を抜けたいか抜けたくないかで働き方が大きく変わります。
もし扶養を抜けても大丈夫であれば、収入に上限を設けることなく、積極的に働いてサロンの収益を増やすことが可能です。
一方、扶養内で経営したい場合は、収入に上限を設けて働かなければなりません。例えば、パート勤務と同じ収入範囲(年収103万円以内)に抑える必要があります(青色申告必須)。この場合、売上や経費を調整し、扶養範囲内で収入を管理しながらサロン運営を行うことが求められます。扶養内で働きたい場合は、経費計上を適切に行い、収入が上限を超えないように管理することが重要です。
恐れずに夢を叶えよう
自宅サロンは、家で仕事をしながら家事を両立できる点が最大のメリットです。例えば、仕事の合間に洗濯物を干したり、お米を研いだりと、柔軟に時間を使えるのが魅力的です。また、ややこしい人間関係もなく、子供が帰宅した際に顔を見て安心できるのも、家庭と仕事を両立する大きな利点です。
そして、何より得意なことを生かして仕事ができる点が自宅サロンの魅力です。私は、自宅サロンを始めて本当に良かったと思っています。だんだんと固定のお客様もつき、毎月お会いできることがとても楽しみになりました。
扶養内で働く場合でも、自宅ネイルサロンを運営する際は、きちんと収支の明細をつけ、年末に調整をすることで扶養内に収めることが可能です。サロン経営は、チャレンジする価値のある仕事ですので、ぜひ一歩踏み出して挑戦してみてください。
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